攻略シリーズ「ブレンドブラシ」の付録です。
標準タイプのブレンドブラシをレイヤーマスク上で使用する方法の手順を紹介します。
ブレンドブラシや補充量の低いブラシをデフォルトレイヤー上で使用すると白を引きずるというPainterの哀しい仕様を回避できるのが[下の色を拾う]チェックです(本編記事参照)。
[下の色を拾う]チェックを使用しての作業はチェックを入れるだけですむので非常に簡単ですが、描画後にレイヤーやパーツ毎に色を変えるのが難しくなります。
作業後に色補正をする可能性や、別の配色のバージョンを作成などの必要がなければ単純に[下の色を拾う]チェックで作業するとよいでしょう。
そこで、この付録で紹介するのがレイヤーマスクを使用する方法です。
ブレンドブラシをレイヤーマスク上で使用することで透明部分との境界をぼかすことが出来るようになります。結果、[下の色を拾う]を使ったときと、ほぼ同様な描画結果を得つつ、色補正や色換えに対応できるようになります。作業自体は少し手数が増えますが、後で修正する可能性のある作品にはこちらの方が効率が良いと思います。
このレイヤーマスクを使用した作業は、Photoshopにある[新規塗り潰しレイヤー]>[べた塗り]を使った作業と似たようなものになります。こちらを使ったことがある方には結構慣れた感じで使えるのではないでしょうか…。
では、実際の作業手順について紹介します。
1.新規レイヤーを作成して、適当な色で全体を塗り潰し(メニューバーの[編集]>[塗潰し]を使用)。
選択色については後で塗り潰しをやり直したり、色調補正で色を補正できるので適当に選んでもらって構いませんが、雰囲気を見るためにも一応仕上がり予定の色で塗り潰しておくのが無難でしょう。
2.新規レイヤーマスクを作成
3.マスクを反転(反転させると、塗り潰しの色が消えて透明なレイヤーの状態になります。)
4.マスク側を選択して、選択色を白にする。
ここまでの詳細は下図参照。
後は塗りたい部分を描画していけば色が出てきます。
使用するブラシは、マスク上で使用できない一部のブラシ(デジタル水彩や重ね塗りタイプのブラシ、水彩系など)を除けば、どんなブラシでも使用できます。ブレンドブラシもプラグイン系のもののみ使用できませんが、それ以外であれば問題なく使用できます。
しっかりした不透明度で塗りたいときにはべた塗りブラシなど、影などの少し半透明に近くてもよいような場合は補充量の低めのブラシなどといった感じで使い分けると良いと思います。またべた塗りブラシで縁取り後に塗り潰しツールを使って一気に塗り潰すことも出来ます。
レイヤーマスク描画中は、描画がはみ出したときは選択色を黒にして描画します(消しゴムは使いません)。
境界をぼかしたいときには、ブレンドブラシ(標準タイプのものでOK)が使用できます。
塗りの範囲が決まったら、レイヤーパネルでRGB(通常の画像)側を選択して、色を変えたりブレンドしたりといったことも出来ます([下の色を拾う]チェックは不要)。
出来上がったレイヤーは下のレイヤーの色に全く影響を受けていないので、単独で色を変えることが出来ます。
[編集]>[塗潰し...]で再度別の色で塗り潰したり、色補正で補正するとよいでしょう。
下図は、ベースの上に重ねる影レイヤーを作成した手順です。
影レイヤーなどのレイヤーマスク作成時、はみ出し部分を毎回修正するのは面倒です(クリッピングマスクがないので)。そこでベースのレイヤーを使って、はみ出し部分を一気に削除すること作業が楽になります。
下図がこの作業手順になります。
さらに下図は、実際にレイヤーを塗り潰し直して配色を変えてみたバージョンと、実際のレイヤー構成になります。
レイヤーマスク作成作業は毎回だと少し面倒なのでスクリプトを作ったり(マスク作成→マスク反転とか)、ショートカットキーやカスタムパレットの使用などを併用すると良いと思います。
(すごく些細なことなのですが、[マスク部分を描画]と[RGB部分を描画]や[下の色を拾うをオンにする]を選択するスクリプトなども作れます…レイヤーパネルやチャンネルから選択するのって地味に面倒じゃないですか?…(笑))
という訳で、今回の作業でよく使うと思われる作業の自動スクリプトとメニューをセットにしたカスタムパレットを配布します。カスタムパレットにはスクリプトが配置されているので、使用する場合は必ずスクリプトライブラリとカスタムパレットを両方ともインポートしてください。Painter 12 で作成しているので、12以降のどのバージョンでもインポートして使用することが出来ます。詳しい内容は下図を参照してください。
配布内容
スクリプト&カスタムパレットセット layer set.zip(123KB)
※解凍後に以下のふたつのファイルが出来ます。
layer set.scriptlibrary (スクリプトライブラリファイル)17KB
layer set.pal(カスタムパレットファイル)455KB
レイヤーマスクとメモリ管理
レイヤーマスクはレイヤー一枚分に匹敵するくらいのメモリを食います。つまりレイヤーマスクを作成するとレイヤーを倍作ったのと同じになる訳です。元々メモリ管理の下手なPainterなので、レイヤーを増やすことはリスクを増やすことでもあります。
今回の画像について、メモリ量などを確認してみました。
画像のサイズは2500×3000ピクセル。最終的にレイヤーが23枚、そのうちレイヤーマスクを使ったものが15枚でした。描画中の使用感は特に遅延や作業が気になるといったことはなかったのですが…。
使用メモリを確認したところ、Painter起動時にPainterの使用量が0.3GB弱、このファイルを開いたときの使用量が1.2GB弱でした。
我が家の全メモリは16GBで、ファイルを開いての作業中でもPC全体で5GB程度で、またOSが64bit版なこともあり特に問題はないようでしたが、メモリ量が少ないPCや32bit版だと少し厳しい状況になるかもしれません。
PC環境によっては、離れた部分のパーツはレイヤーを纏めるなどレイヤー数を減らす工夫が必要かもしれません…。
さらに、作業中に描画作業が終わって不要になったレイヤーのレイヤーマスクを[マスク適用]を行って通常のレイヤーのみにするという方法でメモリ量を抑えれば良いのでは…と思い試してみたのですが、マスク適用時にメモリを使って使用量が増える上に、その後なくなったレイヤーマスクのメモリ分を解放してくれないようで…単に使用メモリが増えるだけという結果に…((゜◇゜)ガーン)
これでは[マスク適用]は役に立たないのでは?と思ったのですが、実はそういうことでもありませんでした…。
今回の画像でレイヤーマスクがある全てのレイヤーに対して[マスク適用]を行って保存し、Painterを終了。
再起動後にこのファイルを読み込んだときの使用メモリ量はなんと0.7GB程度に収まりました。ここからの作業再開であれば、少しでも使用メモリを減らすことが出来ます。
つまり、Painter再起動後のファイル読込であれば、[マスク適用]はかなり有効のようなのです。
そこで、作業中は特に[マスク適用]は行わずに、作業を終えて保存する前に描画を終えたレイヤーに対しては[マスク適用]でレイヤーマスクがない状態にしておき、次の作業に備えるというのが一番ベストなやり方のようです。
ある程度の量を描いたら、いったん[マスク適用]して保存、Painterを終了して休憩というのが、メモリに優しい(?)使い方になるということですね(笑)
[マスク適用]して、いったん通常レイヤーのみになった場合でも[チャンネルの読み込み]でレイヤーの透明度情報から再度同じ状態のレイヤーマスクを作成できるので、最終的に微調整するかも…といった理由で残しておく必要はないと思います。
さて、パーツ分けのレイヤーにレイヤーマスクというPainter環境にはあまり優しくない使い方をしてみましたが、実は全体を1枚のレイヤー&レイヤーマスクでも使えます(レイヤー一枚では今回の元々の動機であるパーツ毎に色を変える…というのが全く出来ない訳で…やる意味がないという気もしますけど…(笑))。
[下の色を拾う]チェックが要らないので、キャラだけは背景と分けておきたいというときにも使えるかもしれません(左図参照)。2015年5月のトップ絵はこちらの方法で作業したものです…。
実は同じことは事前に、[透明度をロック]でも多少の工夫(事前に塗り潰し処理をする。読み込む毎に処理が必要。)をすれば同じことが出来ますが、レイヤーマスクの方が意外と楽な気がします。
以上、レイヤーマスク活用編といってもいい感じの付録でした。