Painter Essentials3のブラシのカスタマイズについて 2

Painter Essentials3ブラシのカスタマイズその2です。

基本的な変更方法は前回その1でやりましたので、今回は具体的な変更方法を。

1.一部ブラシのデフォルトレイヤーでの扱いについて

以前、Painter IXブラシのカスタマイズ<2>で解説しましたが、Painter Essentials 3でも、一部のブラシ(ティントの標準丸筆など)では、デフォルトのレイヤーで使用した場合、筆圧の弱い部分などで、色が白くでます。
tint.jpg左図はその時の画像をそのまま流用しましたが…濃い色で塗りつぶしたキャンバスに「デフォルト」のレイヤーを一枚置き、そのレイヤーに、「ティント」の「標準丸筆」で描画したものです。
ティントの標準丸筆など一部ブラシではこのような状態になります。
主に、「補充量」という項目の設定によるものですが、これを回避する方法もPainterIXと同様の方法で可能になります。
標準丸筆の他にも、同様の状態になるブラシはありますが、とりあえず「標準丸筆」で解説しておきます。
「c_標準丸筆.xml」をエディタソフトなどで開きます。

119行目 opacity-animator="None"
123行目  resat-animator="Pressure"
となっているはずです。
これらはどちらも表現設定に関する項目です。
表現設定に関しては、前回も解説しましたが、それぞれの変化がストロークの何に対して変化するかの設定です。
119行目は「不透明度」に関する設定で、ここでは「なし(None)」になっていますので、不透明度は設定値のまま変化しません。
123行目は問題の「補充量」に関する設定で、この設定が「筆圧(Pressure)」になっていますので、補充量が筆圧によって変化することになります。
補充量は値が低くなると「白」に近づきますので、筆圧の弱い部分で上記のような結果になってしまいます。
そこで、123行目の補充量に関する表現設定を「なし(None)」に変更します。
これだけでも「白」が出るという問題だけならば回避できるのですが、そうすると筆圧に対して色が薄くなったり濃くなったりという変化をしなくなり、べた塗りのようなのっぺりした塗りになってしまいます。
そこで、表現設定が「なし」になっている不透明度の表現設定を「筆圧(Pressure)」に変更します。
不透明度はキャンバス上では「補充量」と変わらないような結果になりますが、レイヤー上では筆圧の弱い部分が「白」にならずに透明になります。
tint_2.jpg「補充量」「不透明度」の表現設定をそれぞれ変更したブラシで描画した結果が左図のようになります。
基本的に同様の描画結果になるブラシは、「補充量」の表現設定を「なし」にした上で(これは必須)、不透明度の表現設定が「なし」の場合は「筆圧」に変更することで、改善されます。
これらの変更を加えても、色が全体的に白くなってしまう場合は、補充量が低すぎると思われます。
もし、表現設定を変えただけでは思った結果が得られない場合は、「補充量」の値を少しずつ大きくしてみて下さい。
補充量の設定は次の項目でおこないます。
108行目 resat="0.286"(標準丸筆での補充量の値) 最小値0.00~最大値1.00までで記述します。
最小値の0.00に設定すると、完全に色が出なく(白)なります。

実は、Painter Essentials3のブレンドブラシである「色こすり」「色のばし」のバリアントは、補充量を0にすることで、ブレンドブラシにしているものです。
この為、デフォルトレイヤー上で使用すると、白い色を引きずってしまうことになります。
このふたつのバリアントについてだけは、Painter Essentials3ではどうにもしようがありません。
その為、これらブレンドブラシを使用する場合は、レイヤーを「フィルタ」にした状態で使用するか、キャンバス上で使用するようにして下さい。 

2.べた塗り用のブラシを作る

Painter Essentialsには、なぜかべた塗りのブラシがありません…。
そこで、ティントの「標準丸筆」を利用して、べた塗りのブラシを作ります。

変更する箇所と変更後の設定値は以下の通りです。

41行目 opacity="1.00" 不透明度
42行目 grain="1.00"  粗さ
77行目 advance="0.29" 間隔
108行目 resat="1.00"  補充量
109行目 bleed="0.00"  にじみ
表現設定の114~123行目は全て「None」に。

設定自体は簡単です。
「不透明度」と「粗さ」はPainter Essentials上でも変更できますが、それぞれ最高値にします。
「間隔」というのは、ブラシの一点と次の一点までの距離で、値が大きくなると距離が遠くなります。最高値は2.00で、間隔がブラシサイズのほぼ倍になります。(スタンプ的にブラシの間隔を離して描きたいときなどに、値を大きくします。)
色がぺったりするブラシなので、若干間隔を広げています(この値自体は無理に変更しなくても大丈夫かと…)。
108行目はおなじみの「補充量」です。この値も最高値にします。
109行目の「にじみ」は既に塗ってある色に重ねた場合、その色とどのくらい混ざるかという値です。
0.00~1.00までで指定します。値が高いほど、下の色と混ざるブラシになります。
ベタブラシなので、全く混ざる必要はありませんので、「0」に設定します。

ここまでで、ベタブラシの完成ですが、元々の標準丸筆はサイズに対して、筆圧で変化するブラシになっています。
最小サイズとサイズ刻みは標準丸筆では、以下のような設定になっていますので、必要に応じて(前回の鉛筆ブラシ、今回のペンブラシ参照)設定して下さい。
20行目 min-radius-fraction="0.278" 最小サイズ
21行目 radius-log="1.158"       サイズ刻み
また、サイズの変化がない方がよければ、表現設定114行目の「radius-animator(サイズの表現設定)」を「なし(None)」にします。

3.ペン風ブラシを作る

Gペン風のブラシもPainter Essentialsの標準にはないブラシです。
フルバージョンでは「レンダー」という計算処理された種類の専用ブラシを使用した「スクラッチボード」というペンがありますが、Painter Essentialsにはこの手のブラシがありません。
唯一「レンダー」を使用したブラシというのが「パターンペン」なのですが、これは文字通りパターンを描画するブラシなので、そのままでは通常の色(「黒」など)で描画することができません。
ここで、選択肢はふたつです。
1.レンダー処理されたブラシではなく、一般ブラシを使って出来るだけペン風に近いブラシを作る。
2.パターンペンを利用する。

1の方法はティントの「標準丸筆」を利用します。
基本的には、ベタブラシを作る際の設定と似たような感じです。
以下に変更箇所と設定値を記述します。

19行目  radius="2.0"        サイズ
20行目  min-radius-fraction="0.01" 最小サイズ
21行目  radius-log="1.01"      サイズ刻み
41行目  opacity="1.00"       不透明度
42行目  grain="1.0"         粗さ
83行目  damping="0.8"        滑らかさ
108行目 resat="1.00"         補充量
109行目 bleed="0.00"         にじみ
表現設定は、114行目の「radius-animator(サイズ)」のみ「Pressure(筆圧)」に設定し、それ以外の115~123行目は「None(なし)」にします。

サイズは、一応2.0に設定していますが、必要に応じてPainter Essentials側で修正するとよいと思います。最小サイズとサイズ刻みは前回の鉛筆同様一番小さい値に設定して、筆圧に対して大きく変化するように、また変化が滑らかになるように設定しています。
不透明度、粗さ、補充量、にじみに関しては、べた塗りブラシと同じ設定です。
83行目の「damping(滑らかさ)」は値が高くなると滑らかに線がひけるようになります。ペンなどの時には高い値にするとよいようです。
最高値は1.0ですが、0.9を越えるくらいの値になると、ストロークの動きに描画がついてこれなくなりますので、注意が必要です
ベタブラシとの大きな違いはこの「滑らかさ」だけです。

2の方法はブラシのカスタマイズというよりも、Painter Essentialsでの描き方になるのですが、とりあえず「パターンペン」の83行目「damping」を1の方法同様に「0.8」に設定して別名保存しておきます。
Painter Essentialsを開いたら、100×100程度の小さなファイルでよいので新規作成して「黒」で塗りつぶしておきます。
ペンを使いたいファイルを開くか、新規作成します。
ファイル→クローンソースを選択して、クローンソースに先ほど黒で塗りつぶしたファイルを選択します。
0605es3_02.jpg左図では作業したいファイル(これから描画するファイル)が「名称未設定-1」、黒で塗りつぶした100×100のファイルが「名称未設定-3」になります。
「名称未設定-1」を選択した状態で、ファイル→クローンソースを選択すると、現在クローンソースに選択できるファイルなどが表示されるので、この中から「名称未設定-3」を選択します。
これで、現在の作業ファイル「名称未設定-1」のクローンソースが「名称未設定-3」になった殊になります。
クローンソースである「名称未設定-3」のファイルは作業中(ペン用のブラシを使っている間)は開いたままにしておいて下さい。
この状態で、滑らかさをカスタマイズした「パターンペン」を使用します。
パターンの代わりにクローンソースが使われますので、黒一色で描画することが出来ます。
他の色(セピアなど)のペン色にしたい場合は、クローンソースになるファイルを塗りつぶす際に黒ではなく、描画したい色で塗りつぶしておきます。
少し面倒ですが、この方法を使うと、フルバージョンのペン風ブラシと同じように使うことが出来ます。
下図は、1と2それぞれの方法で作ったブラシと作業手順で描画した結果です。
0605es3_03.jpg実はパターンペンは滑らかさ以外にも、少しカスタマイズしています…(笑)
PainterIXでのブラシのカスタマイズ<4>で使用した「ブースト」という機能に値を追加しているのです。
ブーストに関しての詳しくはそちら(2006.5.18日雑記)をご覧いただくとして…。
一応設定箇所を記述しておきます。
66行目 boost="0.5" (ブーストの値になります。0.0~1.0)
79行目 continuous-time-deposition="True"
79行目は「連続付着」という項目へのチェックで、通常は「False」になっていますので、ここを「True」に変更します。

また「1」、「2」どちらの方法を利用する場合にも、筆圧でブラシサイズの強弱をつけたいときは特に「ブラシトラッキング」の設定が重要になります。
ブラシトラッキングに関しては、PainterIXもPainter Essentialsも同じですので、あわせて上記のブラシのカスタマイズ<4>を参照していただければと思います。
作業自体は面倒ですが、2のパターンペンでの作業を選択すれば、よりきれいな結果が得られるとは思います。

4.デジタル水彩ブラシのカスタマイズ

さて、本当はこれがメインの筈だったデジタル水彩のカスタマイズです。
「新シンプル水彩」が若干描きにくいので多少修正したブラシと、同じ設定でぼかしがついたブラシの作成です。
まずは新シンプル水彩の修正箇所です。
31行目  wet-fringe="0.4"  水彩境界
108行目 resat="0.18"    補充量
109行目 bleed="0.98"    にじみ

水彩境界というのは、周囲に透明水彩の「たまり」のような部分をつける為の値です。
標準の新シンプル水彩では0.1になっていますので、この値を少しあげました。
実はこの「水彩境界」は描画後も変化します。描画時ではなく、その時点で選択しているバリアントの水彩境界の値に変わります。
0608_dw50.jpg0608_dw10.jpg
上左が水彩境界を0.5(上では0.4と書いてますが、試し書きしたときは0.5に設定してました…)にしたものです。
周囲に少し濃い線が出たようになっています。この円を描き終わってから、元の「新シンプル水彩」を選択すると勝手に上右のように水彩境界がない状態に変わってしまいます。
もちろん、もう一度カスタマイズして水彩境界を0.5にしたバリアントを選択すると左のように戻りますが…。
という訳で、水彩境界が違うバリアントを同一のファイル内で表現することは不可能なのです(デジタル水彩で描かれた全ての部分の水彩境界が一斉に変わる為)。
PainterIXでは「デジタル水彩の乾燥」という機能があり、一部のレイヤーを乾燥させることで水彩境界を固定する(ただし、それ以降は乾燥した部分はデジタル水彩としては使用できない)事が出来ますが、Painter Essentials3には「デジタル水彩の乾燥」という機能がありません。

そこで一部分のみ水彩境界を固定させたい(他の部分と違う水彩境界を使いたい)という場合や、他の理由でデジタル水彩部分を他の一般ブラシでも使えるようにしたいという場合は次の方法で強制的に「デジタル水彩の乾燥」作業をする必要があります。

(1)デジタル水彩がキャンバス上で使われている場合
「全て選択」→「レイヤーに変換」で一旦レイヤーに変更した後、「固定」する。

(2)デジタル水彩がレイヤー上で使われている場合
キャンバスに何も描かれていないか、キャンバスの画像と一体化してよい場合は「固定」する。
0608_layer.jpgレイヤーとして独立させておきたい場合は、ダミーのレイヤーを一枚新規作成して、(何も描かなくてよいので)乾燥させたいレイヤーとこのダミーレイヤーを両方選択して「グループ化」した後、「グループ結合」する。
(グループ化は左図を参考に…)
ただ、「グループ結合」すると、グループ内のレイヤー合成方法が何であれ、結合してできたレイヤーはデフォルトレイヤーになってしまいます。
もし、フィルタレイヤーのままデジタル水彩を乾燥させたい場合はちょっと面倒になります。
出来ないことはないです…基本としては線画のスキャンのサイト同じ考え方です。
「クローンソースで塗りつぶし」を利用する形になります。

とりあえず、強制的に乾燥されるのは、「固定」「グループ結合」した場合ということを覚えておいてもらえばよいと思います。
もちろん、デジタル水彩で描画されたものをクローンソースにして新たに「塗りつぶす」場合も乾燥されたのと同じ事になります。

さて、カスタマイズのほうに戻ります。
最初にカスタマイズした項目ではあまり「新シンプル水彩」を変えていませんが、例えばクラシック1.0の頃の「水彩太筆」のようなブラシを作ることは可能でしょうか。
当時の水彩ブラシと、Painter Essentials3(つまりPainterIXの…)のデジタル水彩とではテクスチャに関する反応が違いますので、全く同じブラシ…というのは無理でした…(笑)
が一応似たような設定にしたらどうかな…というのが次の設定値です。
19行目 radius="28.2"        サイズ   
20行目 min-radius-fraction="0.08" 最小サイズ
31行目 wet-fringe="0.28"      水彩境界
41行目 opacity="0.29"       不透明度
42行目 grain="0.58"        粗さ
77行目 advance="0.17"       間隔
78行目 min-advance="2.4"      最小間隔
108行目 resat="0.09"        補充量
109行目 bleed="0.59"(0.85)     にじみ 
114行目 radius-animator="Pressure"   表現設定 サイズ
120行目 grain-animator="Pressure"(None) 表現設定 粗さ
()の中の値は私がこちらのほうが良さそうと思って、変更した値です。
テクスチャに関する反応を除けば、割と近い雰囲気のブラシになります。

次に「ぼかし」のあるブラシを作ります。
Painter Essentials3に標準であるぼかしがつくデジタル水彩バリアントはいくつかありますが、ぼかし水彩は色が濃くなりすぎたり、ウォッシュブラシはぼかしの値が小さかったり…となかなか良いブラシがありません。
そこで、カスタマイズして出来上がったぼかしなしのブラシをそのまま流用して「ぼかし」のあるブラシを作ります。
この方法の良い点は、水彩境界が両方のブラシで揃うという点です。
水彩境界が変わってしまうと、せっかくの描画結果が変わってしまいます。元のバリアントに戻せばいいとはいうものの、同じにしておいたほうが簡単です。
「ぼかし」がつくと、水彩境界の値がどんなに高くても境界が全くつかなくなる(水彩境界の値は無効になる)ので、普段使うブラシはぼかしのあるものとないもので水彩境界を揃えておく方がよいのです。
下図は、最初に新シンプル水彩をカスタマイズしたブラシに更に「ぼかし」の価をつけたものです。
0608_pd12.jpgぼかしのついたブラシにするには、次の一行の値を変更するだけです。
49行目 post-diffuse="12"
デジタル水彩のぼかしの設定です。設定値は0~20の整数値です。
20がぼかしが一番強い状態、0はぼかしなしです。
12程度でよいのではないかと思います。(もちろんもっと強くてもOKですが)
他は全く同じ設定で、ぼかしの値のみ変えたブラシをそれぞれ別名保存しておくとよいと思います。

補足
デジタル水彩用のブレンドブラシは、デジタル水彩の塗り用ブラシの補充量を0にすることで作成できます。
その際「にじみ」の値は塗り用のものよりも少し大きめにしておくとよいと思います。
デジタル水彩のぼかしを入れるかどうかはお好みで。


だいたい以上のようなブラシを用意しておくとよいのではないでしょうか。(デジタル水彩は使用する場合のみで良いですが…(笑))
ブラシをカスタマイズしていくと、ブラシの数がどんどん増えていきます。
そうすると当然Painter Essentialsに必要なメモリもどんどん必要になっていきます。
むやみやたらに増やさずに必要最低限にしておくと良いと思います。
もし不具合が出るようになったりした場合は、一旦初期状態に戻す(Shiftキーを押しながら起動すると初期状態に戻ります)というのも良い方法です。
(一応ユーザー設定ファイルをバックアップしておくと、後でまた少しずつ戻していけます)

エディタソフトでの修正は色々面倒ですし正式な対応ということでもないのであまりお薦めはしませんが、やってみようという際の参考になれば…と思います。

ということで、Painter Essentials3に関しての雑記は一応今回で終了ということになります。
また何か面白いアイデアなど見つかりましたら、記事にしてみたいと思っていますが…。
以下にPainter Essentials3使用の際のお役立ちサイトさまの情報を載せておきますので、是非ご参考に。

PainterClassic、Painter Essentialsで遊ぼう! 
KAZUさんのサイト クラシック1.0からPainter Essentials3までの紹介が各バージョンごとに分かりやすく書かれています。

Q's next gallery
クーさんのサイト ブラシのカスタマイズやフォトショップとの連携での作業などがhow toに書かれています。

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